特定秘密保護法の成立に抗議の意思表明
《質問》高田由一 県議
質問に入ります前に、先日、特例秘密保護法が、国民の反対や不安を押し切って強行採決されました。
特定秘密は「わが国の安全保障にとって著しく支障を与える恐れがある」など、広範かつあいまいな要件で政府が指定し、何が秘密かも秘密です。
私たちも、この県議会でオスプレイの訓練などをとりあげましたが、特定秘密とされれば質問することも答弁することもできなくなります。議会制民主主義の根本がおびやかされます。
特定秘密保護法の成立に、強い抗議の意思を表明するものです。
1.日置川の河川整備
(1)洪水への対応
・治水計画の根拠
最初に、日置川の河川整備の問題についてうかがいます。私は、平成23年の9月県議会でもダムの問題を中心に河川の問題を取り上げましたが、来年7月に殿山ダムの水利権が更新時期を迎えるにあたり、流域住民の命とくらしを守る立場から再度、質問をさせていただきます。
日置川については現在、2度にわたる河川審議会やパブリックコメントの手続きもへて、県管理2級河川・日置川水系の河川整備基本方針が策定されようとしています。このなかで、治水については40年に一度の確率で起こる規模の洪水に対して被害がでないような方針になっています。
県内の河川では、国管理の紀の川水系が150年に一度の洪水に対応する方針、熊野川水系は100年に一度の洪水に対応することになっています。県管理の河川では、有田川、日高川も100年に一度の洪水に対応することになっています。
一方、一昨年、大災害が起こった那智川は30年に一度、日置川はさきほど言ったように、40年に一度の洪水への対応でよしとする案になっています。
同じ県管理河川でも、なぜ、河川整備基本方針の治水の部分でこのようなちがいがあるのか。その根拠について、県土整備部長にうかがいます。
《答弁》 県土整備部長
和歌山県における河川整備基本方針の計画規模決定ルールは、平成11年の第2回和歌山県河川審議会においてお示ししておりますが、流域面積や洪水により氾濫した場合に想定される区域内の面積、人口、資産額の指標を基本に、過去に発生した水害の規模等を総合的に勘案し、決定しております。
日置川水系河川整備基本方針につきましては、現在策定中でありますが、この指標からは計画規模は年超過確率30分の1となりますが、昭和33年に発生した水害の規模を考慮して、40分の1の計画規模で検討しているところです。
《質問》高田由一 県議
答弁がありましたが、治水方針を定めるためのルールがあるということです。事前に資料をいただいたので、議場にもお配りしています。※資料1
日置川でいえば、人口が足りないために、40年に一度の洪水への対応でいいとなっている。
この表でみますと、氾濫想定区域内の人口が877人で1,000人に満たないから、ここがネックになって40年に一度の洪水への対応でいいとなっているように思います。資料の表の真ん中にあるように、人口が1,000人に123人足りないから、一段下のランクの治水方針でいいとなったのですが、どう考えてもこの川筋には、住民基本台帳でみても1,500名くらいの人口があると思うのですが、なぜ877人とカウントされているのですか。
《答弁》 県土整備部長
氾濫想定区域ですが、洪水による河川の氾濫により浸水するおそれのある区域を求めたものでございます。その区域の人口につきましては、日置川においては、平成12年国勢調査のデータを基に算定して、877人としております。
《質問》高田由一 県議
川筋全体の人口ではなくて、氾濫が想定される区域内の人口をカウントするとこうなるというお話ですが、では、その浸水の想定は何年に一回の洪水規模を予想して想定しているのですか。
《答弁》 県土整備部長
氾濫想定区域は、洪水時の河川の水位、これは計画高水でございますが、年超過確率40分の1により、地盤の高さがその水位よりも、地盤の高さが低い沿川の地域等の氾濫区域であります。
《要望》高田由一 県議
40年に1回の洪水で浸かる地域の人口は877人、だから1,000人に満たないから40年に一度の計画規模でいいとなる。決め方がどうもよくわからない。50年から100年に一度の洪水で想定すれば、もっと区域内の人口は増えるはずです。少なくとも明治の水害では日置川付近で49名が亡くなられ、家屋の流出、倒壊が500戸以上となっていることから、大きな洪水ではその氾濫区域のなかにもっと多くの人口が含まれてくることになります。こうしたことも考えにいれていただきたいと思います。
それで次の質問に移ります。
・計画規模決定ルールの見直し
《質問》高田由一 県議
被害をうける住民にとっては、どこに住んでいようが他の地域と同様に守ってもらいたいと思うのは当然です。洪水被害をうけたときの補償が一部分しかない今の状況のなかで、流域の安全度はここまでしか保証できませんというのでは、これではますます日置川流域の過疎化に拍車がかかることになりかねません。計画規模決定のルールを見直し、地域間の格差をなくす方向で考えるべきではないでしょうか。
《答弁》 県土整備部長
河川整備基本方針の計画規模決定ルールにつきましては、国や他の府県も同様ではございますが、河川の重要度を重視するとともに、既往洪水による被害の実態、経済効果等を総合的に考慮して定めるものとしており、現時点で見直す考えはございません。
具体的には県内河川の計画規模は、先程も述べましたように、流域の大きさや氾濫した場合に想定される被害の大きさ等によって決定をしております。
(2)殿山ダムに関して
《質問》高田由一 県議
つぎに、殿山ダムに関してうかがいます。
殿山ダムの発電用水利権は、来年7月に30年目の更新時期をむかえます。昭和29年に知事によって許可された水利権は昭和59年に更新され、今回更新されれば2回目となります。30年ごとの更新ですが、今回は期間を20年ということで短くするようです。地元の日置川では昭和33年の大水害、平成2年の19号台風でダムからの大放流を経験し、裁判にもなりましたし、ダムが水害を増してきたという意見は根強くあります。
一昨年9月の一般質問でこのダムの問題を取り上げ、ダムの改良や運用の改善を水利権更新時期に関電に求めてはどうかと質問したところ、知事が水利権という問題を使わなくても「理をつくして議論する」と答弁され、その後、一定の運用改善がはかられました。このことについてはご努力に感謝したいと思います。
今回、取り上げるのはそもそも論であります。この殿山ダムの当時の設計が、現在的な知見から見て、妥当なものであったかどうかということであります。これは今回、先ほども取り上げた日置川の河川整備基本方針を勉強するなかで疑問にもったことです。
・40年に一度の洪水時の流量予測
《質問》高田由一 県議
では質問に入ります。県がこのたび策定しようとしている日置川水系の河川整備基本方針は40年に一度とされる洪水に対応するものになっていますが、そのとき基準地点となる下流の安宅(あたぎ)という地区では毎秒4,100トンの流量となる予想になっています。では、この量が下流で流れているとき、殿山ダムの地点ではどれくらいの流量となる予測をしていますか。答弁をお願いします。
《答弁》 県土整備部長
現在策定中の日置川水系河川整備基本方針(案)では、年超過確率40分の1の洪水時における殿山ダム地点の流量の計算値は毎秒約3,400立方メートルとなっております。
・ダム設計時の流量予測とその確率
《質問》高田由一 県議
毎秒3,400トンということです。
では、ダム設計時の設計流量はどれくらいの量で、それは何年に一回の割合でおこる洪水に対応するものになっていますか。答弁をお願いします。
《答弁》県土整備部長
殿山ダムの設計洪水流量は、年超過確率100分の1で、毎秒3,000立方メートルです。
・流量予測の見直し
《質問》高田由一 県議
毎秒3,000トンで、これは100年に一回の確率という答弁でした。県が40年に一度おこる洪水を計算したら、殿山ダムの地点では毎秒3,400トン流れる計算になった。一方で、昭和29年当時の関電の設計では毎秒3,000トンは100年に一回の確率でしか流れないことになっている。これは大きな矛盾です。※資料2
じつは、このダムの設計というのは昭和33年、日置川の大水害がおきた年の県議会でも大問題になってきたものです。当時の議事録を見ますと、最初、関電が出してきた案では毎秒2,000トン、これでは少ないということで県が指導して毎秒3,000トンにして、さらに2割の余裕をのせて3,600トンにしたという経緯が載っています。
ところが、ダムが完成した翌年の昭和33年(1958年)に、100年に一度といわれた毎秒3,000トンをこえる毎秒4,000トン以上のダムの堰堤を超える大洪水がおこったのであります。また、それに近い2,700トンもの洪水が平成2年(1990年)19号台風のときにも起こりました。どちらもダムのゲート6門すべての放流です。なぜ、100年に一度のはずの毎秒3,000トン前後の洪水が、たった40年のなかで2度も起こるのか、おかしいじゃないかという気持ちは地元ではずっとあったのですが、今回、県が河川整備の方針を作る際の計算でみれば、あの洪水は40年に一度起こる規模としてはありうるものだということが明らかになったわけです。
40年に満たない期間のあいだに、関電が予測した100年に一度規模以上とそれに近い洪水が2回おきている。これは、ダム設計当時の流量予測がどうみても誤っています。この際、現在の知見で殿山ダムの計画洪水の流量予測を見直すべきではないでしょうか。答弁をお願いします。
《答弁》 県土整備部長
殿山ダムの設計洪水流量は、昭和4年7月の既往最大水位記録と、昭和14年から昭和27年までの水位データ等を用いて、その時点での最新の知見に基づいて算定しているものであります。
また、関西電力からは、設計洪水流量を超えるある程度の洪水に対して、ダム天端を越流しても堤体の安全性には問題がないという報告を受けております。
いずれにしましても、県としましては日置川の洪水対策につきましては、堤防の築堤や、殿山ダムの洪水時における事前の水位低下を平成24年6月より運用開始するなど、今後ともハード、ソフト両面から、洪水時の被害軽減に努めてまいります。
《質問》高田由一 県議
流量予測の見直しを質問したのですが、するかしないかよくわかりません。部長は当時の関電の設計流量が今日的に見て、これでいいと思われているんですか、それともよくないと思われているんですか。
《答弁》 県土整備部長
関西電力から、設計洪水流量を超えるある程度の洪水に対しては、先ほども申しましたように、ダム天端を越流しても堤体の安全性に問題がないという報告を受けております。
仮に、今後、殿山ダムの改築等がされる場合には、現在の河川管理施設等構造令に適合する施設に改築するよう指導するものと考えておりますが、現地点では、見直すことを考えてはおりません。
《要望》高田由一 県議
私は、すでに県がきちんと独自で計算したデータを持っているのですから、いまの知見からすれば、あのダムの流量予測を根本から見直すよう求めてもいいのではないかと思います。そのうえで必要ならば、ダムの改良も含めて検討させるべきだと思います。水利権の更新でもあるので、しっかり関電と議論されるよう要望させていただきます。
それと、答弁にもありましたが、河川管理施設等構造令という政令では、ダムの設計について200年に一度の洪水でも安全に流せるよう求めています。それと比べて、40年で一度の洪水でさえ天端を越えて流れっぱなしになるようなダムはとても怖くて認めるわけにはいきません。
ここに前回の水利権更新時の昭和59年、当時の日置川町長・阪本三郎氏に関電が回答した書類があります。防災目的を加味したダムに改造してほしいとの町民の要望に関電は、次のように回答しています。「明治22年に田辺市内で記録した日雨量901.7ミリの雨が万一、ダム上流に降った場合、ダム地点の流入量は推定で毎秒約8,700トンになりダム天端を越流することになりますが、この場合でもダムが決壊する心配は全くありません」と、このような回答です。これは今、部長が答弁されたことと通じるものがあると思います。しかし、仮にダムが大丈夫でも毎秒8,700トンもの洪水が下流を襲ったら、流域では多数の死者がでるでしょう。こんな予測までしておきながら、それに対する備えがされていないことは許されるものではないということを申し上げておきます。
(3)防災面の強化
・洪水ハザードマップについて
《質問》高田由一 県議
関電が設計を見直すかどうかには全く関係なく、現実には40年に一度の洪水やそれ以上の規模の洪水はいつ起こってもおかしくありません。そこで現在、県の浸水想定区域図をもとに白浜町で作成した日置川の洪水ハザードマップは、河川整備基本方針と同じ40年に一度の洪水を予想しています。40年に一度の洪水ではここまで浸水しますという図面です。ハザードマップまで40年に一度にこだわらなくてもよいはずです。日置川では100年に一度の洪水はこないのでしょうか。この際、ハザードマップ作成のための浸水想定区域図を見直すべきだと思うのですがいかがでしょうか。
《答弁》 県土整備部長
日置川につきましては、県が平成18年7月に水位周知河川に指定するとともに、年超過確率40分の1の降雨による浸水想定区域を公表し、これに基づき、白浜町が平成20年3月に洪水ハザードマップを作成したところです。
また、公表に際しましては、「支川のはんらん、想定を超える降雨、高潮、内水によるはんらん等を考慮していませんので、この浸水想定区域に指定されていない区域においても浸水が発生する場合や、想定される水深が実際の浸水深と異なる場合があります。」と文章で掲載し、注意を促しております。
加えて、現在県としましては紀伊半島大水害を受けて、計画規模を超える洪水に対する浸水想定区域の洪水レベルの考え方やその活用の方策などについて検討を行っているところであり、大規模な洪水に対しても、早めに安全な避難が行えるように取り組んでまいります。
《要望》高田由一 県議
この洪水ハザードマップでは、群馬大学の片田敏孝先生がこの分野の権威でもあります。片田先生が「消防科学と情報」という雑誌の2002年夏号にこのハザードマップについての注意を書いてくれています。
「第一の問題点は,洪水ハザードマップを配布しても,それを捨ててしまったり無くしてしまったりする住民が多いことである。
二つめの問題点は,洪水ハザードマップに示される情報が,洪水災害のイメージを固定化してしまうことである。洪水ハザードマップは,降雨や堤防の破堤についてシナリオを与えて,洪水氾濫のシミュレーションを行った結果が示されているに過ぎず,洪水氾濫がそのシナリオにとどまる保証は何もない。
三つめの問題点は,洪水ハザードマップの表現能力の問題である。一般的な洪水ハザードマップは,紙の地図に予想浸水深がその区分に対応した色で表示されており,流速を表示することは難しい。流速が速い場合,例え浸水深が浅くても水の中を歩いて避難することは危険であるにも関わらず,住民は浅い浸水深に安心する傾向が強い。
四つめの問題点は,洪水ハザードマップが"洪水安全地図"に変わってしまう場合があることである。
以上のような問題点を克服するためには,洪水ハザードマップの公表のあり方が重要になる。」
こうした点に注意して検討されるようよろしくお願いします。
・ダム情報のホームページへの提供
《質問》高田由一 県議
つぎの質問です。これも一昨年の9月議会で質問した問題ですが、熊野川水系の電源開発のダム群については、県のホームページでリアルタイムに放流状況がわかるようになりました。ところが、殿山ダムについては未だそうなっていません。洪水がおこると何度もダムのテレホンサービスに電話をして聞かなければならず、たいへん不便ですし、情報の提供ルートは2重、3重にあったほうが安心です。殿山ダムの放流状況についても県ホームページで確認できるよう求めますが、答弁をお願いします。
《答弁》 県土整備部長
河川の水位やダムの放流情報等の提供は、洪水時の住民の避難行動や水防活動等に重要であると考えております。
このため、和歌山県では紀伊半島大水害を踏まえ、平茂24年10月から国土交通省の「川の防災情報」で公表されている一級水系である紀の川や熊野川の国土交通省管理のダムや電源会社管理のダムの情報についても県ホームページで提供しております。
一方、二級水系である殿山ダムの情報につきましては、「川の防災情報」に接続されておらず、ダム管理者である関西電力に県ホームページでのデータの公表の協力を呼びかけておりますが、データ伝送にかかるネットワークやシステムの構築が必要であるとのことから実現ができておりません。
県としましては、今後も引き続き協力を働きかけてまいりたいと思います。
《要望》高田由一 県議
水利権更新までに実現できるようぜひしっかり指導していただきたい。
・洪水予報河川の指定
《質問》高田由一 県議
次に日置川は現在、水防法の定める水位周知河川ですが、気象庁と共同して水位等の予測を行う洪水予報河川に指定できないものでしょうか。
《答弁》 県土整備部長
現在、河川の流域面積が大きく、洪水により大きな損害が生じる可能性のある有田川、日高川、古座川、熊野川の4河川につきましては、区間を定めて今後の雨量の見通しと河川水位の予測を行う洪水予報河川の指定を行っております。
日置川につきましては、河川水位が設定された水位に到達したときに、水位情報を関係市町等に通知する水位周知河川として指定するとともに、テレビのデータ放送や防災わかやまメールなどで、住民の方々へも情報提供を行っているところです。
議員ご指摘の日置川における洪水予報河川指定につきましては、同流域での実績データから予報精度の確保等の技術的検討も必要であるということから、現時点の指定は難しいものと考えております。
なお、県としましては、流域の雨量や上流の水位情報などの防災情報につきまして、今後も県のホームページや多くのメディア等を活用して、提供してまいりたいと考えております。
(4)利水と環境への配慮
・河床掘削の影響
《質問》高田由一 県議
次に、今回の河川整備基本方針では、日置川の河口から6キロまでの範囲の河川整備は、洪水時の流量を確保するため、河床の掘削をしていくようですが、これには地元からも心配の声があがっています。
まず最近、特にひどくなっているといわれているのが水田用水の塩分です。河床が下がって、潮が田野井地区という河口から4キロメートルの地点まであがっているといわれていて、稲作への影響もでています。
また、日置川はアユで有名ですが、河床の掘削はその産卵への影響も指摘されています。
さらに、日置川の河口部分には葦原が発達しているところがあり、そこに「シオクグ」というカヤツリグサの仲間の植物や、県のレッドデータブックにも載っていて本県では日置川の河口にしかいないという「ヨドシロヘリハンミョウ」という昆虫がいます。これらへの影響はないかと心配の声もあります。こうした心配にどうこたえるのか。答弁をお願いします。
《答弁》 県土整備部長
日置川におきましては、これまでも河川水辺の国勢調査や河川整備基本方針策定時における調査の中で、動植物の生育・生息実態を把握するなどの環境調査を実施しているところです。
また、現在策定中の日置川水系河川整備基本方針(案)におきましては、「適切な技術的知見に基づき、できるだけ河川環境への影響の回避・低減を努めるとともに、必要に応じ代償措置を講じる」こととしており、実際の河床掘削等におきましても可能な限り環境の保全に努めてまいりたいと考えております。
・潮止め堰堤設置要望について
《質問》高田由一 県議
水利組合や区長らから県と町にあてて、潮止め堰堤の設置要望があがっています。これらの地区では稲作への塩害は以前から問題になっていたが、水をくみ上げるポンプを上流につけかえたりしてしのいできました。日置川では、これまでダム建設や砂利採取もあり、下流部では河床が低下していると関係者は言っています。河川管理をしている県土整備部で潮止め堰堤をつくるなど対応してもらいたいとのことですが、この要望にどうこたえますか。
《答弁》 県土整備部長
平成25年7月、本年7月に日置川区長会から和歌山県及び白浜町に対して潮止め堰堤の設置要望があったことは承知しております。
また、白浜町からは、満潮時にはJR鉄橋付近まで潮が遡上しており、近年の海面上昇と渇水時の河川流量の減少など悪条件が重なった時に塩害が発生していると聞いております。
しかしながら、日置川におきましては、平成3年と平成23年の両方の河道の測量データを比較しましても河床高に大きな変化がない現状でございます。したがいまして、潮止め堰堤を河川管理者で設置することは考えておりません。
なお、白浜町からは、ポンプ工法による上流地点での取水も1つの選択肢として検討する旨うかがっております。
・汽水域の調査
《質問》高田由一 県議
先ほどの、水稲の塩害を心配する声にこたえるためにも、いわゆる汽水域で塩分濃度が季節や潮回りでどう変化するのか、まずは調査をはじめてデータを蓄積する必要があると思うがどうでしょうか。
《答弁》 県土整備部長
和歌山県では、日置川をはじめ県内河川におきまして、河川の水質を監視するための測定を行っております。
日置川におきましても、平成19年から安宅(あたぎ)橋地点で年4回塩化物イオン等の測定を行っており、データを蓄積しているところです。
県としましては、この測定値も参考にしつつ、河川工事を行う場合には必要に応じて調査を追加するなどしながら、利水と環境にも配慮してまいりたいと考えています。
2.住宅新築資金等の滞納分解決へむけて
《質問》高田由一 県議
報道によりますと、9月6日に県市長会が来年度予算に関する要望を知事に提出したそうであります。そのなかで御坊市長から、同和対策として実施された住宅新築資金等貸付事業について、制度を作った国や県に対し滞納整理について強い要請があったようであります。この住宅新築資金は、歴史的社会的理由によって生活環境等の安定向上が阻害されている地域の環境の改善を図るため、住宅の新築や改修または土地の取得について必要な資金の貸付を行う制度であります。
国制度は、国の補助金と市町の起債によって原資をつくり、それを個人に貸し付けています。この制度を使った36府県の大部分はこの国の制度のみで運用していますが、和歌山県、高知県、神奈川県だけが県独自の制度を作っています。なかでも和歌山県は、国制度、県制度どちらをどう使ってもよいという制度にしましたから、借り入れをした個人のなかには、家の資金に県制度、土地を買うのに国制度を使っているなど、家屋敷でちがう制度を使っている例もたくさんあります。
この和歌山県独自の制度は、当時の民生部同和室が窓口になって市町村振興資金特別会計のなかで市町へ原資の貸し付けを行い、市町が個人に貸し付けるという制度になっていました。国制度も、県制度も、あくまでお金の貸し借りは借り入れた個人と市町との間の関係になります。個人が滞納した場合、市町はいわば肩代わりするような形で一般会計から持ち出しで国や県に償還しています。
滞納の状況は※資料3をご覧ください。昨年末時点で、国制度で約31億円、県制度で約23億円となっています。償還率でみると、低い市町では60%台のところもあるが、平均すれば22市町で93%程度になっています。
こうした状況のもと、貸付金の償還が最大で25年におよぶため、その間における市町の事務費負担を軽減し、償還事務の適正化を図ることを目的として、国は「償還推進助成事業」として、平成4年から債権回収や法的措置への補助制度を作りました。これには県も応分の負担をしています。また、その後、平成14年6月県議会で日本共産党県議団の金田議員が住宅新築資金等貸付制度について質問。県の市町村振興資金から貸し付けた分の滞納については、補助制度がなかったことから県の支援を求めたところ、平成17年に滞納処分促進対策補助金として県独自の制度ができました。
補助制度の実績は、制度発足当初からの合計で国制度約6億円、県制度約2300万円となっています。
国制度については事務経費の他に、法的措置のための費用に4分の3の補助がでます。また、債権回収のため強制執行などをした場合、どうしても滞納分との差額がでてきます。これについても、回収不能になった金額の4分の3が補助されます。事務経費は対象外になっている県の補助制度でも、回収不能金額の2分の1の補助がでます。ただ、県の回収不能になった金額への補助は、債権放棄を補助要件としているため、実績が伸びていないという意見もあります。具体的に言えば、それぞれの市町の議会において、貸し付けをうけた個人名を公にして債権放棄の議案を通さねばならないというハードルがあります。そこでうかがいます。
(1)県補助制度のねらい
県の補助制度の狙いはなんなのか。答弁をお願いします。
《答弁》 企画部長
県は、ただ今の議員のご質問の中にもございましたけれども市町が貸し付けました同和対策住宅新築資金等貸付金の回収に当たりまして、借受人からの滞納が発生しておりますので、この問題を解決するために、弁護士費用などの事務的経費のほか、債権放棄を要件として、未償還額と強制執行等による取立額との差額などを対象とした「同和対策住宅新築資金等貸付金滞納処分促進対策補助金」を平成17年度に創設いたしました。
この制度は、市町における滞納債権の回収と回収困難な債権の整理を促進することによりまして、市町の財政負担の軽減を図ることを目的といたしております。
《要望》高田由一 県議
債権整理を積極的にすすめるためにも債権放棄を要件としているとのことですが、いずれにしても国制度と県制度のちがいから補助金を利用しにくい実態があります。しかし一方で、田辺市のように県の補助制度を活用して大きな実績をあげているところもあります。
市長会からも要望があがっていることについて、真摯に対応されるよう要望します。
(2)市町の債権管理への支援
《要望》高田由一 県議
この資金の滞納は、国、県の制度をあわせて約55億円となっていますが、そのうち法的な措置などにより、国や県の補助金を使えるのは一部です。償還が滞っている方の大半は経済状況もあり、契約変更して細々と償還を続けている世帯が多いと聞きます。もちろん、現に家族がそこで生活しているのですから、金融機関のように無慈悲に抵当権を執行するというわけにもいきません。そんな状況のなか、今後も相当、長期にわたる債権管理の負担が市町にかかってきます。こうした市町の負担に対して、新たな支援の枠組みが必要な時期が必ずくると思います。今のうちからしっかり研究して、これ以上、国や県の作った制度で市町の負担が増えないよう要望して質問を終わります。